研究概要 |
ある種の含フッ素ヘテロ芳香族カルボアミド類が緑藻類に対して生育抑制効果をもつことを見出したが,含フッ素ヘテロ芳香族アミソ部分の合成に多段階の経路が必要であり,コスト的に問題があるため,当初,ポリフルオロアルキル鎖を持つヘテロ芳香族アミソの実用的な合成法の確立をはかるとともに,より高い除藻活性を示す化合物の探索を目的として研究を開始した。ハロゲンー金属交換法反応により,熱的に不安定なポリフルオロアルキルリチウム試剤を低温で発生させ,これを三フッ化ホウ素エ-テラ-トの共存下に各種の極性化合物へ作用させることにより効率よくポリフルオロアルキル化を行なう方法を初めて開発し,弱いLewis酸による基質の活性化とポリフルオロアルキルリチウム試剤の保護効果をうまく組み合わせたこの方法を利用して一連の含フッ素ヘテロ芳香族カルボアミドを合成し,その除藻効果について検討した。多種類のカルボアミドについて植物や藻類に対するその生理活性を体系的に調べた結果,当初の期待とは異なり,ポリフルオロアルキル基やフッ素原子の存在が強い生理活性の発現には必ずしも不可欠な因子ではないことが次第に明らかとなり,越果的にNー〔αー(2ーチイル)エチル〕ー4ーイソプロピルベンズアミド(I)が優れた除藻効果をもつことが確認された。化合物Iを安価な原料から簡略な経路で合成する方法を種々検討し,クメンから容易に得られる4ーイソプロピルベンズアミドをりん酸を含むぎ酸中でチオフェンおよびパラアルデヒドと直接縮合させてIを解率よく得る方法の開発に成功した。Iの植物に対する生理活性評価を行なった結果,Iはクロレラ,緑藻,らん藻などの淡水産藻類に対して優れた活性を示すが,塩水生の藻類には活性が弱く,水生微生物(非光合成)には全たく活性をもたないことが判明した。
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