研究概要 |
織物の原料として特徴ある太繊度の生糸を生産する目的で、飼育法、飼料、蚕品種、生理活性物質の投与等を検討した。その結果、以下の条件により、4齢幼虫の経過を延長させることによって最終齢幼虫の吐糸口の拡大をはかり、太繊度の繭を得ることが出来た。通常は2デニ-ル内外の繭糸繊度であるのに対して、単繊度で約4デニ-ルの繭糸を繰糸することができた。 蚕品種としては日507号・日508号×中507号・中508号(愛称さきがけ)を用い、4齢24時間目に幼若ホルモン活性物質(メトプレン)を1頭当り100μg投与する。飼育は人工飼料あるいは桑葉の何れでもよいが、飼育温度はやや低めとし、いわゆる締め飼いを行う。上蔟の時期については特に注意し、適期を逃さぬように心がける。 1000頭程度に実験室レベルとしては大量飼育といえる規模の飼育を行い、得られた太繊度の繭糸を用いて27デニ-ルの生糸を繰糸したところ、約500gの生糸が得られた。そこで、現在は生糸を用いて織物あるいは編物等の製品を制作するべく検討中である。 なお、太繊度の生糸の物理的特性について確認すべく、細繊度繭糸を吐糸する品種「あけぼの」の1.5デニ-ル程度の細い繭糸から、4デニ-ルを超える「さきがけ」の太い繭糸にいたる10数種の太さの異なる繭糸を収集し,ほぼ同じ太さ(27デニ-ル)の生糸を繰製した。それぞれの生糸の強力、伸度、ヤング率、動的弾性率等の物理的な性質を調査した。 その結果、太繊度の繭糸より繰製した生糸は細繊度の繭糸から繰製したものと比較して、概して剛性が強い、いわゆる腰の強い物理的特性を備えていることが確認された。
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