研究概要 |
芳香族アミノ酸残基を殆ど含まないオゾン分解カゼイン(OC)は,原料カゼイン(C)に比べ真の消化率は低いが,生物価は同等である。OC摂取ラットの各組織は,C摂取ラット比べて病理組織学的には異常は認められないが,盲腸,腎臓重量が有意に高い。OC摂取ラット尿にのみ存在するアミノ酸誘導体の内,微量成分として昨年度4ーメチルプロリンを報告したが,多量成分の方はβーアスパチル尿素(βーAU)と同定された。βーAUはカゼインを8M尿素溶液中でオゾン酸化する際,芳香族アミノ酸より生成する(オゾニドの加尿素分解の様な機構が考えられる)こと,従って飼料として与えたOC中に元々存在していたものがラット体内で殆ど分解されず尿中に排泄されることが判明した。βーAUは極めて水難溶性であり,又尿中排泄量もかなり多いことから,上記の腎臓肥大の一因である可能性もあり,OC中のβーAU残基の分解を試みた。βーAU残基分解には,タンパク質中のアスパラギンを加水分解する条件を適用し,酸処理OCを調製した。タンパク質中に存在するβーAU量を定量する方法がないため(加水分解によりアスパラギン酸とアンモニアを生じるため,アスパラギンと区別できない),この酸処理OCを用いてラット飼育実験を行った。酸処理OCはラット飼育実験の結果,OCよりも摂取量,成長共に有意に低く,その理由の一つとして,原料OMが無味無臭の易溶性白色粉末だったのに比べ,酸処理OCがザラついたテクスチュアを持つ吸湿性の高いものだったことがあげられる。更に,酸処理OC摂取ラット尿にはOC群と殆ど同量のβーAUが排泄されており,タンパク質中のβーAU残基を酸処理で分解するのは困難であることが判明した。上記のようにβーAU残基は,タンパク質の8M尿素溶液中オゾン酸化により生成することから,βーAU残基を含まないOCを調製するには,カゼインを尿素を用いずに可溶化するか,微粉化して固体のままオゾン酸化する方法が考えられるが,今回はナトリウムカゼインを原料として水溶液中でオゾン酸化することにより,目的とするOCを得ることができることを確認した。
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