研究概要 |
(1)最終年度に当たるため、従来の研究成果の再検討を含めたとりまとめを行なった。 (2)バイオリアクタ-としてイソマルトデキストラナ-ゼの固定化による限外濾過膜内でのイソマルト-スの製造法を検討するため、種々の方法により本酵素の固定化を試みたが、イソマルト-スの大量製造に適した簡便で安価かつ本酵素を直接使用したときよりも安定性の高い固定化法を開発することができなかった。今後さらに検討を要する課題と考えられる。 (3)本製造法によるイソマルト-スの大量製造に際しては、安価なデキストランを使用することが望ましいが、デキストランの種類により従来の研究で明らかになったデキストランの処理条件が異なると考えられるので、それらの条件を各種のデキストランについて検討した。その結果、デキストランT2000に関して従来得られた条件(0.2N塩酸、95℃、4時間処理)が他のデキストランにも適用でき、この条件が各種デキストランのα-1,6-グルコシド結合以外のα-1,2-、α-1,3-およびα-1,4-グルコシド結合の切断に最も適していることを確認した。この条件下で処理後、イソマルトデキストラナ-ゼの反応よりデキストランの分解率は90%以上となり、イソマルト-スの収率は70%以上となった。 (4)イソマルトデキストラナ-ゼの酵素化学的性質に関する最終的検討の一つとして、基質アナログ(マルト-ス)を用いた阻害実験を行ない阻害物質定数(Ki)を測定した。本酵素とマルト-スの相互作用により、特徴的なUV吸収スペクトル(差スペクトル)が観察された。マルト-スの濃度をTrp残基に起因する293nm付近の分子吸収係数から算出したKi値は0.09mMとなり、速度論的方法により求めたKi値(0.95mM)とよく一致した。
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