研究概要 |
本研究の最終年度である平成3年度は,これまでに構成したインテリジェントコントロ-ルシステムに対し,ベンチテストおよび圃場実験によりシステムの応答特性の解析を行い,トラクタ作業機のインテリジェントコントロ-ルの必要性と有効性を検証し,システムの適応制御機能を構成するための3つの学習適応機構の特性を明らかにした。 1.経験的学習適応機構は,ニュ-ラルネットワ-クの記憶機能,学習機能,検索機能および補間機能を利用したもので,作業環境の変化に対する速応性が発揮されていることを確認した。この学習機能によってシステムは作業経験を重ねるにつれシステム自体の進化が期待され,制御系の「自動化」から「知能化」への質的転換を行う上で不可欠の機能であることを示した。 2.オンライン学習適応機構は,制御系の応答特性の改善を位相補償によって行うもので,具体的には位相のメンバシップ関数の調節を対象としたものである。これは,本研究で新たに提案したファジィ制御器の設計方法によるもので,比較的広い作業環境の変化に対する応答の改善に有効であることをシミュレ-ションおよび実験により確認した。 3.耕うん反力適応機構は,学習適応機構には適しない,短周期でかつランダムに変動する耕うん反力に対し,アッパリンク力からその変動を直接検出する方法を採用し,応答が速く,作業機の自重による制御操作の速応性の実現に極めて有効であることを確認した。 4.ファジィ制御の導入は,メンバシップ関数の調節による学習適応機構の実現を容易にしインテリジェントコントロ-ルを実現する基本的手法として有効であることを実証した。また,本システムのような強い非線形性と外乱変動を伴う制御系においてはファジィ制御がその操作量出力の非線形特性から従来のPID制御より適していることを示した。
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