分析カラ-螢光電子顕微鏡の開発とその医学生物学における応用

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01870002
• 研究種目: 試験研究(B)
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 小川 和男 京都大学, 医学部, 教授 (20077556)
• 研究分担者: 酒井 眞弘 京都大学, 医学部, 助手 (40183363) ; 藤本 和 京都大学, 医学部, 講師 (50159125) ; 藤本 豊士 京都大学, 医学部, 助教授 (50115929)
• キーワード: 分析カラ-螢光電子顕微鏡 / カソ-ドルミネッセンス / 螢光分析 / 分析電顕 / コレステロ-ルエステル / ビタミンAエステル

研究概要

我々の開発した分析カラ-螢光電子顕微鏡に、カソ-ドルミネッセンス(CL)の集光効率を改善するためにコンピュ-タ制御により超精密加工された楕円ミラ-を装着した。また、-120℃の低温を保ち、凍結切片の装着も可能なクライオホルダ-を新たに導入した。これらの装置により、生物試料からの微弱なCLを今までより更に効率良く検出することが可能となった。これらの装置を用いてラット網膜、副腎皮質などのCL(自発螢光)を観察し、分光分析を行ってみた結果、以下のような知見が得られた。
ラット網膜においては、ビタミンA過剰および欠乏状態、暗順応および明順応状態における分光CL像の変化から、445nm付近にピ-クを持つCLがビタミンAエステルより発せられていることが強く示唆された。そこで生後発達途上のラット網膜のCLを観察してみたところ、生後0日目においてすでに網膜色素上皮はビタミンA貯蔵細胞として機能しているが、視細胞外節では生後13日目になって初めてCLが検出可能となることが判り、視機能発達との関連が示唆された。ラット副腎皮質細胞において我々の今までの研究結果から、320nmにピ-クを持つCLとコレステロ-ルエステルとの関連が強く示唆されていたが、下垂体摘除ラットの副腎のCLを観察したところ束状帯〜網状帯にかけて出現する大きな脂肪滴に一致して強い320nmのCLが観察され、今までの結果を支持する所見と考えられた。また、ラット精巣、卵巣においてもCLの周期的な変化が観察され、これらの臓器におけるコレステロ-ル代謝研究へのCL分析の応用が可能と考えられる。
この様にCL分析を用いて生体内の物質を分離し、今までの分析電顕や組織化学的な方法では検出が困難であった特定の物質の分布やその動的な変化をとらえることが可能であることが明らかになった。

研究成果

• [文献書誌] T.Nakano,T.Fujimoto,H.Koike,K.Ogawa: "Application of analytical color fluorescence electron microscopy to biomedical field:I.Vitamin A ester in rat retina." Acta histochemica et cytochemica. 23. 753-767 (1990)
• [文献書誌] T.Nakano,T.Fujimoto,H.Koike,K.Ogawa: "Application of analytical color fluorescence electron microscopy to biomedical field:II.Cholesterol ester in rat adrenal cortex." Acta histochemica et cytochemica. 23. 769-780 (1990)
• [文献書誌] T.Nakano,G.Ning,T.Fujimoto,H.Koike,K.Ogawa: "Electron Microscopy 1990 Proceedings of the XIIth International Congress for Electron Microscopy,vol.3" San Francisco Press Inc.Ed.by L.D.Peachey and D.B.Williams, 980 (1990)
• [文献書誌] K.Ogawa,T.Nakano,G.Ning,T.Fujimoto,K.Nishimura,H.Koike: "Electron Microscopy 1990 Proceedings of an International Symposium held in Beijing,China,October 1990." World Scientific Publishing Co.Ltd.Ed.by K.H.Kuo and J.E.Yao, (1991)