研究概要 |
小腸上皮並びに腎尿細管刷子縁膜に存在するH^+依存性小ペプチド輸送担体の生理学的意義を解明するのに、その特異的制体の開発が必要である。従来のペプチド担体の特性に関する知見を基に、(1)刷子縁膜ペプチタ-ゼに抵抗制のペプチド構造の解明、(2)膜結合性の強い側鎖とすべき構造の選択、(3)H^+結合サイトへ親和制を持ちH^+との共輸送を阻害する構造の発見、の3方向から検討し、抑制体合成の設計の基礎とした。 (1)に関しては、小腸反転襄をpH8.0等張K^+リンゲル液に浸漬し、ペプチド輸送の起こらぬ条件でメジウムに各種ジ、トリペプチドを加え、メジウムを高速液体クロマトグラフで分析することにより、ペプチド分解の速度を調べた。その結果、ラット小腸ではGly-Pro及びGly-Sarは全く分解されず、Ala-Ala,Ala-Ala-Alaが最も速やかに分解され、その他多くのペプチドは部分的に異なった速度で分解されることが明らかになった。従ってPro,Sar構造をもつものをペプチド結合サイトの部分に結合させる必要があるとの結論を得た。(2)の問題に関してはPhloretinが第一候補として考えられ、まずそれとペプチドの化合物(Phloretin-dipeptide)の合成法を検討し、その効果を調べた。Phloretin-homoSer-Glyは比較的強い抑制作用を示し、Kiは50μMであったが、Glyをメチル化したPhloretin Ser-Sarは殆ど効果を示さなかった。ペプチド構造からはSer-Sarの方が望ましく、またKiは1〜数μMが望ましいため、Phloretinに代わる構造の探索が尚必要である。静電的膜結合の度合を見るため、amiloride,cimetidin,loperomide,serotonine等の有機塩基について観察した結果、これらは何れも粘膜側負電位を持続的に減少させることから、膜の表面電位を結合によって変化させている可能性が強いことが示唆された。従ってこれら有機塩基とジ、トリペプチドの化合物について検討する必要がある。同時にグアニジン化合物の相互作用も目下検討中である。
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