研究概要 |
小腸刷子縁膜に存在する小分子ペプチド輸送担体の特異的抑制体の分子デザインに必要なペプチド結合位の結合特性、結合を補強する補助結合基の選択に関する研究は前年度までに行ったもので、本年度は特にペプチド結合位に対する親和性を保持するが水解を受けないペプチド構造の解明に重点を置いた。小腸刷子縁膜にはアミノペプチダ-ゼの外、ジペプチダ-ゼ活性も見られるが、後者の特異性については無Na^+及びNa^+含有代用液中でのジペプチド誘発電位(反転嚢標本孵置液に基質を添加したときの上皮電位の変化)を速度論的に解析すり方法と同標本を無Na^+,高K^+アルカリ性代用液中に孵置して基質(ジペプチド)の消失と遊離アミノ酸の出現をHPLCを用いて測定する2つの方法で各種ジペプチドについて比較した。その結果、ラット小腸ではGlyーPro,GlyーSar,には全く水解が見られず、AlaーAlaは特に速やかに水解されること、他のジペプチドの水解速度はAlーAl>GlyーLeu>SerーGly>AlaーLeu>LeuーGly>AlaーGly>LeuーAla>GlyーGlyの順であることを確かめた。この順位はNoren et al.(1973)が精製したブタ小腸細胞ジペプチダ-ゼの特異性ときわめて類似している。また細胞内には見られるプロリナ-ゼは刷子縁膜表面には存在しないことが明らかになった。但し刷子縁膜はトリペプチド(AlaーAlaーAla)も極めて効率よく水解するが、Norenの精製したジペプチダ-ゼにはトリペプチド水解活性は見られずAlaーAlaーAla等のトリペプチドの分解はアミノペプチダ-ゼの作用によるものと解釈された。またジペプチド分子のN末端、C末端部の修飾(アセチル化、エステル化)をGlyーLeuについて検討した結果、何れも水解性を消失させるが、担体との親和性も失われるため。結合基群として用いることは出来ないことが明らかになった。
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