本年度は、ソフトウェアを完成させ、これを用いて動物実験の結果得られたデ-たを解析した。 1.ソフトウェア開発:シグナル・プロセッサ-7T17(日本電気三栄、現有設備)を用い、信号処理専用高級言語Signal BASICーversion 5(日本電気三栄、現有)によって記述された呼吸性活動解析プログラムパッケ-ジを改良、修正し、 RESPACKー17 version 1.0を完成させた。また、同プログラムの使用マニュアルを作成した。さらに同プログラムによって作成され、記憶媒体上の書き込まれた神経活動のパワスペクトルのデ-タの基づいて、非線形最小二乗法に基づく吸息性高頻度同期波の定量化解析を行なうプログラムパッケ-ジ HFOーPackage ver 5.0 を完成させた。この両パッケ-ジを動員することにより、神経活動電位ならびに筋活動中に発現する呼吸リズム性活動のほぼ全体像を定量的に評価することが可能となった。 2.動物実験とデ-タ解析:麻酔下に非動化した人工呼吸下のウサギまたはネコから、横隔神経、迷走ならびに舌下神経の遠心性発射活動を双極白金電極を用いて同時に導出し、デ-タレコ-ダを用いて磁気テ-プに収録した。上述の標本に、大腿静脈より、pentobarbital、morphine、naloxoneならびに doxapramを適用し、その急性作用を経時的に観察し、磁気テ-プに記録した。完成されたプログラムパッケ-ジを用いてデ-タを解析した結果、これらの薬物の作用について、従来のデ-タ解析方法では明らかにし得なかった以下の新知見を得た:(1)呼吸リズムとその安定性の維持機構に対する薬物の作用態度ならびに機序が異なる可能性、(2)呼吸リズムと呼吸筋支配運動神経群の吸息性活動の形成および修飾に関与する呼吸中枢内神経回路群の薬物感受性が異なる可能性。これらは諸種薬物群の呼吸機能に及ぼす作用の機序を解明する上で重要な基礎となる知見である。
|