研究概要 |
ツメガエル卵の発現系の確立:生物活性を指標としたスクリ-ニングシステムを構築する為、アフリカツメガエル卵母細胞の培養とマイクロインジェクション技法を確立した。つめがえるに性腺刺激ホルモンを注入し、成長させた卵を分離後コラゲナ-ゼ処理によって濾胞細胞を除去してから18℃で培養した。この卵母細胞が外来メッセ-ジを翻訳し得る活性を維持しているか否かを検討する為ラット肝臓から分離精製したPoly(A)mRNAをマイクロインジェクションし、培養液中へ分泌されたラットアルブミンをその特異抗体を用い検索した結果、分子量約67000の成熟型アルブミンが同定された。従って、この実験系がバイオアッセイによる未知遺伝子の解析システムに有効であることが確認された。 肝細胞の増殖制御に拘る因子の同定:我々は肝細胞の初代培養系を用いて現在までに肝細胞の増殖に関係する種々の因子群を同定してきた。新しい肝細胞の増殖促進因子としてHGFを発見し、また肝細胞の増殖抑制因子としてはトランスフォ-ミング成長因子β(TGF-β)やインタ-ロイキンIL-1βやIL-6が効果的に作用することも証明した。興味深い点はこれらHGF,TGF-β,IL-1β,IL-6など肝実質細胞の増殖制御に関係する因子群が全て非肝実質細胞に存在することである。また、肝実質細胞と非肝実質細胞を共存させて初代培養すると増殖因子の無添加でも肝実質細胞の増殖が著しく促進されることが判明し、非肝実質細胞の初代培養では肝実質細胞の均質な培養系であるにも拘らず、外来の増殖因子を加えなくても活発な細胞増殖が認められたので、この細胞には自己増殖促進物質を分泌している可能性が示唆された。そこで、現在、この成熟した非肝実質細胞と幼若肝実質細胞から大量にPoly(A)mRNAを抽出し、ツメガエルの発現系システムでの未知物質の同定を進めている。
|