研究概要 |
好熱菌PS3の上清分画より,実験計画のように主要な熱ショックタンパク質61K,12Kおよび69Kを精製した。主要な分離手段は、これらのタンパク質がATP結合性を持つことを予想し、ATPアガロ-スカラムを用い、吸着、溶離した。さらに各種のクロマトグラフィ-を併用して、それぞれ単一バンドとなるまで精製した。アミノ酸配列を決定したところ、これらはそれぞれ大腸菌のGroEL,GroES,Dnakに、また真核細胞のシャペロニン60、10、70に相同性を示した.次にこれらのアミノ酸配列に対応したオリゴヌクレオチドをプロ-ブとして、好熱菌熱ショックタンパク質のDNA構造を決定した。61Kと12Kの遺伝子はオペロンを形成していた。一方、本研究の過程で,生体膜のエネルギ-変換の中心であるATP合成酵素のαサブユニットが61Kと相同性を持つことが示された。この研究の申請段階ではまだこれらタンパク質の持つタンパク質の再活性化能と膜輸送の研究は未知であったが、数多くの酵素学的、遺伝学的研究が諸外国で行われ、これらの再構成能を持つタンパク質にはシャペロニンと云う総称が与えられた。αサブユニットは、最も著しい熱ショックタンパク質であることがショウジョウバエで示されただけではなく、アフリカツメガエルの受精卵ではそのmRNAが動物極に最も多いmRNAであることも示された。そこで、シャペロニン活性研究の中心を好熱菌のαサブユニットに置いた。好熱菌PS3の遺伝子ライブラリ-より得たαサブユニット遺伝子を大量発現させて、その再活性化能を検討した。ATP合成酵素の膜輸送能とそのプロトン電流の実測については既に本研究室で多くの研究で行われている。そこで好熱菌αサブユニットを用いて初めてα3β3及びα1β1複合体の再構成に成功しこの分野に大きな進展をもたらすことができた。その再構成の過程はシンクロトロン放射光によって解析された。(特許:特願平2ー73664号,名称:熱ショック蛋白質、出願人:香川靖雄)
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