研究概要 |
マウスは化学物質の慢性毒性試験に多用されるが,マウスは元来腫瘍多発系と考えられ,マウスでの陽性所見は必ずしも他の種へ適用出来ない。我々は,マウスを用いた毒性実験にカロリ-制限を適用することにより、自然発症腫瘍の頻度を減少させその結果マウスを用いた発ガン試験の精度向上が得られないか平成元年・2年と検討して来た。平成2年度で,アスベスト曝露後より1年6ケ月,月齢にして1年10ケ月の段階に達しこの間の途中経過を報告する。 マウスは昨年度報告した様に,自然発症肺癌好発系のAIJマウス雌を用いた。処置群は,食塩投与群,酸化チタン投与群,アスベスト高,中低濃度投与群の5群とし投与は4ケ月齢に経気管的に行った。飼料の群として,対照食(C)と制限食(DR)の2群を設けた。投与後対照食(110kal/週)と制限食(50kal/週)で飼育した。以上より動物は,対照食群で5群,制限食群で5群の総計10群よりなり各群25匹を無作為に群分けした。 対照食群では,12ケ月齢で平均体重30grを越したが,制限食群はいずれの群においてもほぼ25gr以下である。対照群においては,19ケ月齢にいたるまでに自然死亡が12例で認められおり,その内11例が肺腺癌による死亡と考えられた。これに対し制限食群では,9例の死亡が認められ腺癌による死亡は,アスベスト中濃度群のマウス1例であった。このように,現在の所,制限食により肺腺癌の発生は著明に抑制されていると結論される。
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