研究概要 |
マウスは化学物質の慢性毒性試験に多用されるが、マウスは元来、腫瘍を多発する動物種と考えられ、マウスでの発癌陽性所見は、必ずしも他の動物種へ適用出来ない。我々は、マウスを用いた毒性実験にカロリ-制限を適用することにより、自然発症腫瘍の頻度を減少させることにより、マウスを用いた発癌性試験の精度向上が得られないか検討して来た。平成3年度においては、アスベスト曝露群の実験を完了し、その解析及び考察を行って来た。 平成3年度の結果:年齢2年で生存例を屠殺した。 生存例は、屠殺時に剖検を行い、肺腫瘍の数、大きさを計測した。2年齢まで生存した例数/全数は、対照食非曝露群では16/22,対照食低濃度曝露群では13/22,対照食中濃度曝露群では13/23,対照食高濃度曝露群では15/24,対照群酸化チタン群では14/24,であった。これに対し制限食群においては、生存した例数/全数は、制限食非曝露群では19/20,制限食低濃曝露群では21/23,制限食中濃度曝露群では21/23,制限食高濃度曝露群では20/24であり、制限食酸化チタン群では17/21であった。対照食群において、低濃度曝露群及び中濃度曝露群においては、有意な生存率の低下(P<0.05,ライフテ-ブル法)を認めた。この一方、制限食群においては、いずれの曝露群においても生存率の有意な低下は認めなかった。また制限食と、対照食の間においては、低濃度曝露群、中濃度曝露群において有意な対照食群の生存率の低下が認められた。 肺腺癌と投与アスベスト量の用量-反応関係を検討した所、対照食群における非担癌個体の頻度と用量の間に有意な用量反応関係(Mantel-Extension Test)は認められなかったが、制限食群においては、有意な用量反応関係を認めた(P<0.05)。
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