ラット背部の皮膚の形成した損傷に関して、局所のアルブミン(A)量とγーグロブリン(G)量ならびに両者の比(A/G)の値の受傷後経過時間に伴う動態をELISA法(サンドイッチ法)によって微量定性定量的に観察し、これらによる生活反応判定について検討し、以下の成績を得た。 1.切創局所のA・G量について、(1)各受傷時間の生前損傷は死後損傷より高値であり、A/Gは各損傷とも死後損傷より低値を示すことにより、切創の生前・死後の鑑別が可能である。(2)受傷後に伴うA・G量ならびにA/Gの値の変化によって、受傷後経過時間の推定の可能性が考えられる。 2.火傷局所のA・G量について、(1)各受傷時間の生前損傷は死後損傷より高値であることより、火傷の生前・死後の鑑別が可能である。(2)死傷後に伴うA・G量ならびにA/Gの値の特徴的な変化により、受傷後経過時間の推定の可能性が考えられる。 3.損傷局所のA・G量に対する腐敗の影響について、約20℃の室温に1週間放置した試料のA・G量にほとんど変化は認められず、本法によってやや腐敗が進んだ試料においても生前・死後の鑑別が可能である。 4.損傷局所のA・G量に対する死斑の出現の影響を検討したところ、ほぼ死斑が完成するまでの時期においては損傷の生前・死後の鑑別が可能である。 以上の成績より、損傷局所のA・G量ならびにA/Gの値による生活反応判定法は、方法が簡便であること、損傷の生前・死後の鑑別が可能であること、腐敗の影響をほとんど受けないこと、受傷後の経過時間のの推定の補助手段となり得ることなどから優れた生活反応判定法と考えられる。
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