血小板由来の新規血管内皮細胞増殖因子の基礎的研究およびその臨床応用

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01870033
• 研究種目: 試験研究
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 高久 史麿 東京大学, 医学部(病)・第三内科, 教授 (40048955)
• 研究分担者: 本田 浩章 東京大学, 医学部(病)・第三内科, 医員 ; 萩原 弘一 東京大学, 医学部(病)・第三内科, 医員 ; 石川 冬木 東京大学, 医学部(病)・第三内科, 助手 (30184493) ; 宮園 浩平 東京大学, 医学部(病)・第三内科, 助手 (90209908) ; 北村 聖 東京大学, 医学部(病)・第三内科, 助手 (10186265)
• キーワード: 血小板 / 血管内皮細胞 / 血管新生 / 増殖因子

研究概要

平成1年度は(1)血小板由来血管内皮細胞増殖因子(PD-ECGF)のCDNAクロ-ニング、(2)PD-ECGFの遺伝子構造の解析、(3)PD-ECGFの産生細胞の検索を中心に研究を行った。PD-ECGFのCDNAクロ-ニングはヒト胎盤のCDNAライブラリ-を用いて行い、PD-ECGFが全く新しいタンパク質であることを明らかにした。またPD-ECGFが内皮細胞の増殖因子であるに留まらず、内皮細胞の遊走を促進すること、in vivoにおいては血管新生を強力に促進することを明らかにした。またこれをもとに遺伝子組み替え型PD-ECGFを得ることに成功し、in vivoにおける実験をスタ-トした。PDーECGFの遺伝子はヒト胎盤より得たgenomicライブラリ-からのクロ-ニングに成功した。PD-ECGF遺伝子は10ケのエクソンと9ケのイントロンから成り約4.8kbにまたがることを明らかにした。またそのプロモ-タ-構造を解析し、これまで知られている細胞増殖因子とは異なる特徴を持つなどいくつかの新しい知見を得た。PD-ECGFの産生細胞の検索ではいくつかの正常培養細胞及び腫瘍細胞株についてイムノブロッティング及びノ-ザンブロッティングで検索した。この結果、正常細胞ではヒト線維芽細胞と平滑筋細胞がPDーECGFを作っていることを見出した。腫瘍細胞株では約20%の細胞がPD-ECGFを産生していたが、とくに未分化の甲状線癌と乳癌の細胞株で大量に作られていることが明らかになった。これらの腫瘍細胞におけるPD-ECGFの腫瘍血管新生因子としての作用を明らかにするために実験を開始した。

研究成果

• [文献書誌] F.Ishikawa,K.Miyazono,F.Takaku,et al.: "Identification of angiogenic activity and the cloning and expression of platelet-derived endothelial cell growth factor" Nature. 338. 557-562 (1989)
• [文献書誌] K.Usuki,F.Ishikawa,K.Miyazono,F.Takaku,et al.: "Production of platelet-derived endothelial cell growth factor by normal and transformed human cells in culture" Proceedings of National Academy of Sciences in USA. 86. 7427-7431 (1989)
• [文献書誌] K.Miyazono & F.Takaku: "Platelet-deived growth factors(a review)" Blood Reviews. 3. 269-276 (1989)
• [文献書誌] K.Hagiwara,K.Miyazono,F.Ishikawa,F.Takaku,et al.: "Organization of the human platelet-derived endothelial cell growth factor gene" EMBO Journal. (1990)
• [文献書誌] 宮園浩平,石川冬木,高久史麿: "血管内皮細胞増殖因子" 代謝(臨時増刊号,癌'90). (1990)