研究分担者 |
石川 冬木 東京大学, 医学部(病)第三内科, 助手 (30184493)
宮園 浩平 東京大学, 医学部(病)第三内科, 助手 (90209908)
北村 聖 東京大学, 医学部(病)中央検査部, 講師 (10186265)
平井 久丸 東京大学, 医学部(病)第三内科, 講師 (90181130)
高久 史麿 国立病院医療センター, 病院長 (40048955)
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研究概要 |
血小板由来血管内皮細胞増殖因子(PDーECGF)は我々が昭和63年にcDNAクロ-ニングに成功しその全構造を決定した新しいタイプの増殖因子である。本研究ではPDーECGFの生体における産生部位の同定,PDーECGFのin vitro及びin vivo作用の解析を中心に研究を進め,近い将来における臨床応用のための基礎的デ-タを得ることができた。 約40種類の腫瘍細胞におけるPDーECGFの発現を検索した結果では,PDーECGFは未分化の甲状線癌や乳癌の細胞で大量に作られていることが明らかとなった。PDーECGFにはタンパク質が細胞外ヘ放出されるためのシグナル配列がみられないが,これらの細胞株でも産生されたPDーECGFは細胞内に留まる傾向があり,PDーECGFがどの様な時にどの様なメカニズムで細胞外へ放出されるかは今後の研究課題として残された。PDーECGFは血小板以外に胎盤でも豊富に作られていることが明らかとなった。胎盤での産生部位は間質の線維芽細胞が中心である。PDーECGFは血管内皮細胞だけでなく絨毛癌の細胞にも作用することから胎盤形成にも関与していることが示唆された。 PDーECGFは限られた組織でのみ産生されていることからその遺伝子構造を明らかにし,その発現調節機構を調べることは極めて重要である。本研究ではヒトPDーECGF遺伝子を単離してそのプロモ-タ-構造を明らかにし,あわせて本遺伝子がヒト染色体22番に位置することを見出した。さらにPDーECGFは血管内皮細胞以外にも一部の上皮細胞に作用することを明らかにした。これらの事実はPDーECGFが損傷修復ホルモンとして臨床的に有用である可能性を示唆するものである。
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