研究概要 |
インシュリン遺伝子を人工皮膚に導入する技術開発のため,次の研究を行った。 1.人工皮膚基質の開発。私達のこれまでの研究によって,ゼラチンは、コラ-ゲン線維より,人工皮膚の基質として優れた特性をもっていることが明らかになった。このことから,皮膚細胞は、コラ-ゲン線維に対するのとは異なる機構で、ゼラチンを認識していることが予想される。この予想を実証するためいくつかの実験を行った。その結果,細胞(ヒト皮膚線維芽細胞)とコラ-ゲン線維が結合するためには,細胞表面のある特殊な糖蛋白(レクチンPHAに反応性をもつ糖蛋白質)を必要とするが,ゼラチンとの結合には,これを必要としないことを明らかにした。 2.人工皮膚基質の生体適合性の検討。私達が開発した人工皮膚基質(多孔性ゼラチンスポンジ)をSD系雄性ラットの側腹部皮下に4日〜4週間埋入させ,生体適合性の検討を行った。埋入4日目に,ゼラチンマトリックス中に線維芽細胞が侵入していることを確認した。埋入4週間で、マトリックスは生体によって分解吸収されていた。 3.インスリン遺伝子の導入に関する研究。前年度に引き続き、組み換え型インスリンの開発を試みた。本年度は、インスリン分泌能を調節することができる組み換え体の作製を行った。マウス乳癌ウイルスのLTRとラウス肉腫ウイルスのLTRの双方のプロモ-タ-を合わせもつpMAN-NeoおよびpMAN-Neo-S発現ベクタ-への組み換え体を作製した。この組み換え体でのインスリンの分泌に関しては、現在検討中である。
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