研究課題
試験研究
内視鏡による早期微小癌の診断と同時治療は将来的に極めて重要である.本研究では狭帯域の干渉フィルタ-を装着した近赤外・近紫外光源とCCDよりなる近赤外電子内視鏡・画像解析システムを開発し、日本人で多いとされる胃潰瘍の治癒過程や早期胃癌の粘膜下血管の変異を人及び動物で検討した。さらに潰瘍患者において、粘膜血流の増加面積と潰瘍面積の比を画像解析で求め、この比が潰瘍治癒の指標として有用であることを見いだした。またflowcytometryにより消化管の生検標本の細胞核DNA量を検討すると、早期胃癌および潰瘍の治癒過程では細胞回転が有意に亢進していた。粘膜細胞回転は近赤外電子内視鏡の画像解析により血流増加のみられる潰瘍辺緑でより顕著であり細胞増殖と粘膜血行の関連が示唆された。Helicobacter感染者の胃粘膜においても粘膜細胞回転は亢進しており、さらに実験動物を用いた検討でHelicobacterにより産生される低濃度のアンモニアが、胃粘膜細胞を傷害し、細胞増殖を亢進させ、発ガンの際にpromoterとして作用することを明らかとした。これに伴う粘膜細胞のpopulationの変化とともに組織血管構築は早期より変化した。組織・細胞の特定の生体色素を顕微分光により解析するために可視〜近赤外光の10波長を解析し、毛細血管内のヘモグロビンの分析から酸素代謝の分布を解析するアルゴリズムを開発した。本アルゴリズムにより、電子内視鏡による組織の拡大観察と機能解析法の方法が確立された。また近赤外電子内視鏡により光照射、温熱、細胞障害物質の局所投与における組織血管構築・深部血流の反応について検討を加えた。その結果、エタノ-ルに代表される細胞障害物質は強力な血管収縮物質であるエンドセリンの産生を促し、粘膜下血管を収縮させ、局所に照射した光あるいは温熱効果を増強する可能性が示唆された。
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