研究概要 |
近年新生児の呼吸不全に対しECMOの有用性が報告されているが、未熟児、循環不全合併例に対する予後は尚不良である。これは従来のVーAECMOによる心後負荷の増大が一つの原因と考えられる。そこで心後負荷を軽減し、より生理的な循環動態を得ることを目的とした拍動流ECMOシステムの試作研究を企画した。 平成1年度は新生児を対象とした心拍同期型拍動流ECMO装置を試作し、その有用性について検討した。拍動流ECMO装置は従来のVーAECMO回路の動脈側に空気駆動バル-ンを挿入したもので、自己心拍に同期させ拡張期カウンタ-パルセイションを行った。子犬を対象とした実験では拍動流ECMOにより血圧、脈圧が上昇し、腎血流量、尿量が増加する傾向がみられ、定常流ECMOに比べ良好な循環補助効果が得られた。 平成2年度はさらにエンドトキシン投与による循環不全モデルを作成し、拍動流ECMOの有用性について検討した。体重3kg前後の子犬に対しエンドトキシン(5mg/kg)を静脈内投与し30分後より定常流ECMO(定常流群:n=6体重2.2-3.6kg、平均2.8kg)あるいは拍動流ECMO(拍動流群:n=6体重2.0-4.0kg,平均2.8kg)を3時間施行し、血圧、脈圧、腎血流量、尿量、動脈血pH、BE、血中乳酸値を30分毎に測定し、両群を比較検討した。尚ECMOは右心房脱血、総頚動脈送血によるVーAバイパスで行い、流量は100ml/kg/minとした。最高血圧はECMO開始60分後より拍動流群で有意の高値を示し、動脈血pH、BEはECMO開始120分後より拍動流群で有意に高値を示した。エンドトキシン投与前値に対する血中乳酸値の較差は、定常流群は高値が持続したのに対し、拍動流群では経時的に低小傾向がみられ、150、180分値で両群間に有意の差(P<0.05)を認めた。以上の結果より、拍動流ECMOは定常流ECMOに比べ、エンドトキシン投与時の循環不全の改善に有用であることが示唆された。
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