研究概要 |
我々は重症な慢性関節リュ-マチ(RA)患者の罹患関節部および腸骨の骨髄中に悪性腫瘍特異抗原(di-LeXなど)を保有する異常な骨髄球と、その分化細胞と考えられる強い組織破壊活性を示す多形白血球(骨髄球系カスケ-ド)を見いだし、これを消退させ関節破壊を抑えることを目標に、RA患者に対する癌細胞特異の糖鎖抗原を用いての感作療法の開発を進めている。抗原としてKATO-III細胞由来の糖蛋白質であるTumor cell specific carbohydrate antigen(TCA)、ヒトの癌細胞の膜抗原で見いだされた悪性腫瘍細胞に特異と考えられている糖脂質であるdi-LeX(di-fucose構造)、mono-LeX(mono-fucose構造)を用いた。対象は大阪大学て治療中の活動性RA患者である。TCAは2ng又は50ng、di-LeXおよびmono-LeXは500ngを感作原とした。投与は原則として2(-3)週の初めの2日間続けて皮内注射をした。RAに対する金療法施行例では1年以上継続例を対象とし観察期間中は免疫修飾剤の使用の変更は行わなかった。関節炎の臨床症状およびRF,CRPなどの検査値での効果判定は術後3カ月(3M)と6Mに行った。臨床症状と検査値の総合評価においての改善例は2ng-TCA:3M:17%(2/12)、6M:50%(4/8),50ng-TCA:3M:32%(12/38),6M:50%(15/30),500ng-di-LeX:3M:42%(18/43),6M:33%(7/21).500ng-mono-LeX:3M:0%(0/5).negative control:18%(3/17)であった。有効例では疼痛の軽減、ESR、CRPの低下が見られた。即ち、TCAおよびdi-LeXは臨床的に有効で薬剤として開発の価値があるが、mono-LeXは無効で薬剤としての意味を持たないことが分かった。 効果の発現はdi-LeXが3M以内に効果を示し6Mでやや低下するのと対照的に、TCAは3Mより6Mで安定した有効性を示した。罹患関節部および腸骨の骨髄中に異常な骨髄球を認めていた重症RA患者に於て投与後に明かな減少を認め、作用機序解明の手がかりを得た。
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