研究概要 |
近年糖鎖構造が癌組織のみでなく、慢性関節リウマチ(RA)等の炎症性疾患の組織でも病態的に重要な意義がある事が明らかにされ、糖鎖構造物の生物学的活性が注目される様になった。 我々は重症RA患者の罹患関節部骨髄中に癌特異抗原と考えられていた糖鎖構造(mono-およびdi-fucosylated type 2 chain:mono-およびdi-Le^χ)を膜抗原として保有する骨髄球系細胞の存在を見いだしたのをきっかけに、この様な糖鎖構造を用いてのRA患者に対する感作療法を試みた。用いた抗原はKATO-III由来の糖蛋白であるTCA(日本抗体研)、ワシントン大学箱守教授供給の糖脂質のmono-およびdi-Le^χである。投与は原則として2(-3)週の初めの2日間続けて皮内注射した。 皮内投与後早い症例では2日後に急激な臨床症状の改善と検査値の改善が見られる等の変化が見られた。投与前に罹患関節部骨髄中の単核細胞の8.32(SD:2.54)%が異常な骨髄球であったものが、投与後1-4(平均2.5)ヵ月では2.04(SD:1.81)%と有意の減少を認めた。しかし、その後再び増加を示す例もあり後述のような有効率になっている。 臨床症状および検査値での効果判定は3Mと6Mとに行った。改善例は2ng-TCA:3M;17%(2/12),6M;50%(4/8),50ng-TCA:3M;32%(12/38),6M;50%(15/30),500ng di-Le^χ:3M;42%(18/43),6M;33%(7/21),500ng mono-Le^χ:3M;0%(0/5),placebo:18%(3/17)で糖鎖抗原による感作療法はRA患者に対して有効な治療法になり得ると考えられた。 作用機序は糖鎖化合物の生物学的活性という事になる。その一つとして糖鎖化合物による免疫反応の抑制がある。RA患者でAutologous MixedLymphocyte Reaction(AMLR)が亢進している症例があるが、ここに糖鎖抗原を加えると、正常のレベルにまで正常化される。やや広い角度から検討するべきと考えている。
|