研究概要 |
1.破骨細胞前駆細胞から破骨細胞への分化過程の解析 破骨細胞の分化過程を各種のマ-カ-の発現を調べることより検索した。破骨細胞の形成系として骨芽細胞と脾細胞の共存培養系を、破骨細胞の分化マ-カ-として酒石酸抵抗性酸ホスファタ-ゼ(TRAP),carbonic anhydrase II,c-src,液胞型プロトンATPase,ビトロネクチンレセプタ-,カルシトニンレセプタ-の発現を検索した。共存培養系で形成された破骨細胞はここに列挙したマ-カ-が全て強力に発現していることが示された。また、これらのマ-カ-の発現を経時的に観察すると、全てのマ-カ-が同時期には発現されることが認められた。また、形成された破骨細胞は骨切片状で、10時間以内に吸収窩を形成することができた。骨芽細胞が調節する破骨細胞の分化過程において、全ての機能を有した破骨細胞への分化が一時期に完了することが示唆された。 2.破骨細胞の骨吸収能評価系の確立 試験管内で形成された破骨細胞を効率よく集め、感度のよい骨吸収評価系を確立した。前述した共存培養をコラ-ゲンゲル上で行った後、コラゲナ-ゼ消化し破骨細胞画分を集めた。この破骨細胞を象牙切片状で培養し、形成された吸収窩を画像解析装置を用いて定量化し、破骨細胞の骨吸収活性に及ぼす各種因子の評価系を確立した。この系を用い、カルシトニンおよびbafiromycin Al(液胞型プロトンATPaseの阻害剤)は吸収窩形成を強力に抑制することが示唆された。 以上のように、破骨細胞の骨吸収活性を簡便に評価できる方法が当該年度の研究で確立された。前年度までの研究より、破骨細胞前駆細胞の増殖と分化に及ぼす各種因子の作用の評価系は確立されており、これらの評価系を組合せて用いることにより、骨吸収因子の作用機作をより詳細に解析できることが期待される。
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