研究概要 |
昨年までに、歯根膜(PDL)細胞の産生する液性因子により末梢血リンパ球・単球(PBL)からの破骨細胞形成が抑制されることを明らかにした。 本年度は、この研究を継続しさらに検討した結果、歯肉由来細胞(GIN)や、歯槽骨由来骨芽細胞(OB)はこのような液性因子を産生せず逆に増加させる液性因子を産生した。また、PBLとの混培養によりPDL細胞のALPase活性は上昇するが、GINやOBは低下した。歯周疾患の原因菌による刺激によってPBLから誘導される破骨細胞にもPDLの液性因子は抑制的に作用することが示された。この事から、菌体またはLPSの作用による造血幹細胞からの破骨細胞活性化因子(OAF;IL-1,IL-6,TNF,M-CSF)が、PDL細胞の産生した液性因子により不活化されたかあるいはその産生が抑えられたと考えられる。 以上の結果から、歯根膜は生理的な骨のremodelingに際し歯槽骨の吸収を抑制し、さらに歯槽骨形成に能動的に作用し歯根周囲に歯槽骨を維持する分化機能を有することが明らかになった。また、細菌感染による歯槽骨吸収を防御する分化機能を有することが示された。このような結果から人工歯根面への歯根膜の再構築は重要な意味があることがわかった。 さらに、生体での歯根膜再生の術式を確立するにあたり歯根膜の発生過程を経時的に組織化学的観察を行った結果以下の所見を得た。ヘルトヴィッヒ上皮鞘が断裂し歯根表面に垂直な線維形成が開始された時期に一致して、歯小嚢由来細胞から分化した歯根膜細胞にALPaseの発現がみられ、線維形成が盛んな部位において特に強い活性がみられた。また、咬合機能時の歯根膜の根分岐部、および歯槽頂線維に高いALPase活性がみられたが、歯肉結合線維には殆ど見られなかった。
|