研究概要 |
歯科材料の為害作用を高感度に予知できる細胞毒性試験法を開発するために本年度は骨原性の培養細胞の樹立および同細胞の特性の検索ならびに高感度毒性指標としての細胞内Caイオン[Ca^<2+>]i計測を行った。 1.マウス頭頂骨細胞:1週齢マウスの頭頂骨から単離した培養細胞にSV40 large T遺伝子を含むプラスミドPMT1-neoを遺伝子導入した。neomycin耐性コロニ-群からアルカリ性ホスファタ-ゼ(ALPase)強陽性コロニ-を分離培養して継代を続け、約50代に達した細胞をディフュ-ジョンチャンバ-内に入れてマウス腹腔内に埋植し、8〜9週後にチャンバ-を摘出し、組織学的・組織化学的に骨形成を検索した。埋植したコロニ-DとV細胞は類骨組織を形成した。骨基質には部分的にアリザリンレット陽性の石灰化部分を認めた。D,V細胞は細胞接触密度においてALPase活性が上昇し、それぞれ0.214±0.036,0.362±0.083μmles/min/mg proteinとなり、またRetinoic acid5×10^<-6>M投与でそれぞれ0.338±0.0095,5.52±0.498となることが明かとなった。D,V細胞は骨芽細胞の特性を部分的に維持しているものと考えられる。 2.高感度細胞障害指標:G_1期に同調した腎由来JTC-12,LLC-PK1細胞にあらかじめfura-2AMをとりこませておき、HgCl_2、ゲンタミシンを投与し、5秒間隔で[Ca^<2+>]iをArgus100を用いて計測した。これらの腎毒性化学物質によりいずれの細胞においても[Ca^<2+>]iは毒物投与後数秒以内に上昇した。HgCl_2投与による[Ca^<2+>]iの上昇は継続性であったが、ゲンタミシンでは一過性であった。また、[Ca^<2+>]iの由来は大部分細胞外からの流入によるものであった。 骨より臓器機能を持続した培養細胞株を開発し、高感度毒性指標として[Ca^<2+>]iを導入することが可能となり、研究計画は達成された。
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