研究概要 |
歯科材料の為害性を適確に簡易に高感度に予知できる細胞毒性試験法を開発するために、1)臓器特性を有する試験細胞を開発し、2)試験法の検出力、簡便性の検討、3)高感度毒性指標について検討を行った。 1.試験細胞の開発:(1)ヒト抜去歯から分離した歯髄細胞を培養しSV40large Tとgeneticin耐性遺伝子PSV1-neoからなるプラスミドpMT1-neoをリン酸カルシウム共沈法で導入して多数のコロニーを分離し、それらの中から増殖性が高く、アルカリ性ホスファターゼ(ALPase)活性の高いコロニーを選択して100代以上の継代を続け、歯髄由来樹立細胞株を得てLSC細胞と命名した。LSC細胞は骨/肝/腎型ALPaseを歯髄組織と同程度保有し、その活性は1α、25(OH)_2D_3等の添加により促進された。またビタミンC存在下でコラーゲン合成能を示した。(2)マウス頭頂骨から単離した細胞を培養し、1週間後に(1)と同様にpMT1-neoを導入し、ALPase活性の高いコロニーを60-100代の継代培養を続け樹立細胞株3種を得、DMCs,LMCs,VMCs細胞と命名した。これらの細胞は1)マウス腹腔内に8週間理殖したディフュージョンチャンバー内で石灰化骨基質を形成し、2)ノーザンブロッティング法によりI型コラーゲン、オステオポンチン遺伝子(mRNA)の発現を認めた。 2.毒性試験法について、本研究で開発したLSC細胞とHeLa、L細胞を用いてニュートラルレッド法(NR法)、MTT法、寒天重層法、ミリポアフィルター法の4法を比較検討した。塩化ニッケルの細胞毒性の検出力は、NR法=MTT法>>寒天重層法の順であり、試験法の簡便性はMTT法及びNR法が優れていた。毒性試験の再現性はMTT法の方がNR法に比較してやや良好であった。試験細胞の感受性はL=HeLa>LSCの順であった。 3.毒性指標として細胞内Caイオン量[Ca^<2+>]iについて検討した。Fura-2AMを負荷した腎尿細管由来JTC-12細胞において6.25μM以上のHgC1_2により、[Ca^<2+>]iは投与5秒後より用量依存性の(非可逆的)上昇が認められた。[Ca^<2+>]iは、高感度毒性指標となりうることが判明した。
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