研究概要 |
前年度に引き続き以下の3項目について研究を行った。 1.人工魚卵様球状体作成装置の改良: 前年度試作した装置は1%のアルギン酸Na(AG)液を針先から加圧下で滴下し,針先周囲の空気流でCaCl_2液中に噴射することにより小滴を作成するものである。この装置で目標通りの直径約500μmの小滴が作成できたが,大きさはAG液の作成方法,印加圧,空気流速,針の太さなどによって敏感に変動し再現性に乏しく,本年度はこれら条件を精密に制御し再現性の向上をはかった。その結果,使用したクロマト針0.5/0.3mmφでは、圧力0.04kg/cm^2G,空気流速6.0l/minで直径500μmのばらつきの少ない小滴ができ,空気流速を遅くすると小滴は大きくなった。クロマト針0.71/0.41mmφ,圧力0.05kg/cm^2G,空気流速7.0l/minでは直径600μmの小滴が得られた。さらにCaCl_2液の回転速度も早い方が真球に近い形となり,前年度より再現性に優れた球体作成が行なえるようになったので,この噴射部分をステンレス製で規格化した。 2.癌細胞の球状体への封入:癌細胞を封入したAG小滴をCaCl_2処理後,ポリカチオンポリマ-とポリアニオンによる被膜形成処理を行ない,内部をクエン酸Naで可溶した。可溶が充分な場合,細胞増殖スペ-スが得られるが,被膜強度は低下し破れ易すくなる。本年度は重合度の高いAGに変更したところ被膜強度は増加した。 3.細胞生存曲線の推定: X線照射後癌細胞を段階希釈し,細胞接着性マトリックスを塗布した24穴プレ-トに植え込み,培養し,染色後,ミニコン制御のTAS Plus画像解析装置を用いてウェル毎の平均濃度を測定した。濃度と細胞数は比例関係にあり,その勾配は線量に応じて減少した。この関係から線量・細胞生存率曲線が完全な分散ができない細胞に対しても推定できた。
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