研究概要 |
前年度に引き続き以下の項目について研究を行った。 1.人工魚卵様球状体作成方法の改良: 前年度までの方法で直径約600μmの球状体に癌細胞を封入することが出来たが、完全な球形ではなく、一部に膜強度の弱い部位が存在した。この問題を解析するため、用いるアルギン酸ナトリウムの重合度118,1%溶液の粘度が約500CPのものを用い、さらにポリリジンの分子量22,000を使用した。アルギン酸の減菌方法もフィルタ-法を用いて、重合度の低下を防いだ。得られた球状体は完全な球形で、培養下での細胞増殖も良好であった。この方法で作成した膜は低分子及び中分子デキストラン(分子量40,200)に対して良好な透過性を示し、高分子デキストラン(分子量480,000〜2,000,000)に対しては低い透過性を示し、インスリンの透過性も他のより低い、またはより高い分子量のポリリジンを用いたときよりも高いことが確かめられている。このことは低分子のアルブミンなどの血清蛋白は透過性が高く、免疫グロブリンなどの高分子物質は透過しないことを意味している。 2.生体内移植について。 人工球状体をマウス腹腔に移植すると、血小板、血球等の付着が著しく、長期間の移植では回収時に破れることが明らかになった。皮下または腎皮膜下の移植の方が優れている。 3.細胞生存率の計測アルゴリズム。 ウェル中の細胞数とウェルの平均濃度は正比例関係にあり、この勾配は線量依存性に減少した。同一濃度のフィルム面積を変化させると、ウェル当りの平均濃度は面積と比例することが確かめられた。 以上の結果から、安定で細胞毒性のない球状体に癌細胞を封入し、細胞生存率をin vitro及びin vivoでアッセイすることが可能になった。
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