研究概要 |
本研究では固型悪性腫瘍の特徴をもち、しかも制癌効果を定量的に評価できるような生体アッセイ系を確立することを目的に、以下の3項目について実験を行った。 1.人工魚卵様球状体の作成 アルギン酸ナトリウム(AG)液を針先から塩化カルシウム液に滴下し、直径約500μmの完全な球体マイクロカプセルを作成する装置を試作した。カプセルの大きさ、再現性、膜強度、物質透過性は、用いるAG重合度、減菌方法、ノズルの形状、空気流量、ポリリジン分子量など多くの因子によって変動することが明らかになり、最終的にARの重合度118,1%溶液の粘度500CPを用い、フィルタ-法で減菌し、完全な球状のカプセルが得られた。膜強度、透過性はポリリジン分子量22,000のものが優れていた。 2.癌細胞の増殖と生体内移植 ヒト癌細胞を封入したマイクロカプセルを培養すると、細胞は良好な増殖を示し、スフェロイドを形成した。これらをマウス(WHT/Ht)腹腔、または皮下移植する数日中に膜表面に血球成分が付着し、腹腔移植の場合日数を経過するとカプセルの回収率は低下した。 3.濃度測定により細胞生存率の推定 細胞を24穴プレ-トウエルに植え込み、培養、固定染色後にウェル当りの平均濃度を測定することによって細胞生存率を推定する方法を試みた。細胞数と濃度は比例関係にあり、その勾配は細胞生存率に依存して変化した。この方法でヒト癌細胞GBAー7及びTEー2のX線の線量・細胞生存率関係を推定すると、前者は明らかに放射線抵抗性を示した。この傾向はコロニ-法で推定した結果と一致した。
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