研究概要 |
S.mutansのう蝕原性の発現に際し,S.mutansに特有な菌体結合性でかつ非水溶性グルカン合成能を有するグルコシルトランスフェラ-セ(CAーGTase)の作用を調べるため,CAーGTaseに対する卵黄抗体を作製し,同抗体によるう蝕抑制効果をラット実験う蝕系で調べた。CAーGTase,水溶性グルカン合成酵素(CFーGTase)およびS.mutans全菌体(WC)に対する卵黄特異抗体は,各々の抗原を18週齢のニワトリの胸筋にフロイントの完全アシュバントと共に免疫して行った。被免疫ニワトリの卵を集め,卵黄をクロロホルム処理による脱脂後,IgGを含む水溶性タンパク画分を凍結乾燥したものを実験に供した。SPFのSDラットに,S.mutans MT8148R株を感染させ,同時に乾燥卵黄特異抗体を0〜1%配合したう蝕誘発性飼料2000を自由に摂取させた。S.mutans感染55日後にラットを屠殺し,プラ-ク指数とう蝕スコアを算出した。その結果,CAーGTase,CFーGTaseおよびWCに特異的な抗体を含む飼料をS.mutans感染ラットに投与すると,抗CAーGTase抗体配合群のみが対照群に比べ,プラ-ク指数,う蝕スコアともに有意に値下した。次に抗CAーGTase抗体の最少有効量を決定するために,0.025%から1%までの濃度で飼料に配合し,そのう蝕抑制効果を検討した。その結果,01%以上の抗体を配合した群において,プラ-ク指数,う蝕スコアの有意の低下が認められた。以上の結果は,抗CAーGTase卵黄特異抗体による経口受動免疫が,う蝕の予防に有効な手段となりうる可能性を示唆している。
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