研究概要 |
本研究の目的は、可溶化膜蛋白質の分子量決定に有効な低角レ-ザ-光散乱法をさらに発展させ、膜蛋白質の多量体構造と酵素活性・リガンド結合能などの機能的側面の関係を同時に解析できるシステムを開発せんとするものである。 1、膜蛋白質分子量測定システムの開発: 平成元年度:ゲル濾過カラムに低角レ-ザ-光散乱計を示差屈折計・紫外吸光度計とともに接続することにより、可溶化膜蛋白質の分子量測定システムを確立した。 平成二年度:本システムを可溶化した筋小胞体CaポンプATPaseに応用し、monomer分子量=109000【plus-minus】6300(n=3)の値を得た。これは既に知られている筋小胞体CaポンプATPaseの一次構造のアミノ酸配列から計算されたmonomer分子量の理論値 110331と一致し 2、筋小胞体CaポンプATPaseの酵素活性・分子量同時測定、およびATP加水分解に共役した高次構造変化: 平成元年度:上記システムを応用し、可溶化ATPaseの酵素活性を分子量との同時評価を可能にした。ATP非存在下では可溶化ATPaseはmonomerとdimerに分離して溶出するが、ATP添加により両成分が融合し、ATP加水分解に共役した両成分の速い相互変換が示唆された。 平成二年度:さらに、筋小胞体CaポンプATPaseの活性サイクルの中で、いかなる段階にmonomer,dimer間の相互変換が起きるかについて検討した。Ca結合型のE_1およびE_1P状態ではmonomer,dimer間の相互変換は起きず、両成分は分離して溶出した。これから、両成分の相互変換はCa非結合型のE_2,E_2P状態ないしE1→E2,E2→E1の状態変換時に起きることが示唆された。
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