研究概要 |
我々は、細胞膜小胞系を用いて薬物輸送研究を進め、この実験系が小腸や腎尿細管における薬物吸収・分泌過程の機構解明に有用であると共に、薬物吸収・分泌の一次スクリ-ニング法としても応用可能であることを指摘した。本研究では、セファロスポリン系抗生物質・ピリドンカルボン酸系抗菌剤等の繁用薬物を中心にして細胞膜小胞による輸送実験とin vivo動物実験デ-タの相関解析を行ない、細胞膜小胞系による薬物吸収・分泌の新しいin vitro評価法を確立せんとするものである。 1.小腸や腎尿細管から調製した細胞膜小胞の輸送活性を保持したまま、長期間保存するための条件について、グルコ-ス輸送能を指標として検討した。その結果、膜小胞は、-80℃で2〜3週間保存しても輸送活性を十分保持していることがわかった。 2.抗悪性腫瘍剤ベスタチン((2S,3R)-3-amino-2-hydroxy-4-phenylbutaboyl-L-leucine)は異常アミノ酸を含むジペプチドであり、脂溶性が低いにもかかわらず、経口投与によってすみやかに吸収される。セフラジンなどの経口用セファロスポリンをH^+/ジペプチド共輸送系のprobeとして用い、小腸刷子縁膜でのベスタチン輸送について検討した結果、ベスタチンはH^+/ジペプチド共輸送系を介して能動輸送されることが示された。 3.ピリドンカルボン酸系抗菌剤オフロキサシンは、腎尿細管において能動分泌される。尿細管刷子縁膜小胞を用い、オフロキサシンと有機アニオン輸送系、有機カチオン輸送系、ジペプチド輸送系との相互作用について検討した結果、オフロキサシンは有機カチオン輸送系を介して分泌されることが示唆された。
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