高性能の超微細プロセスを可能にするには、基板へ入射するイオンの速度ベクトルの向きと大きさがそろっており、大口径で一様なビ-ムであること、また、損傷を与えない程度に低エネルギ-であること、などの条件を満たす必要がある。これらの条件をクリアするには放電の低圧力化、大口径化、低プラズマ電位化、高プラズマ密度化が求られる。このような要請に応えるために、本研究では表面磁場(磁気壁)中の誘導型高周波放電プラズマを提案し、その開発を行った。 表面磁場の解効果として次の点が期待できる。電離生成に寄与する高エネルギ-電子が磁気壁で反射されるのでプラズマの発生率が向上し、低エネルギ-のバルク電子の拡散も抑制されるので電子損失も減少する。このことは両極性拡散電界の減少、すなわちプラズマ電位の低下を導き、また、大口径の一様性の良いプラズマが生成される条件が整ってくる。 本研究において試作した表面磁場装置では、期待される通り、次のような有望な実験結果が得られた。 1.2×10^<-5>Torrの低圧力においても放電維持が可能になった。 2.直径約40cmの一様性の良い大口径プラズマを生成できた。 3.プラズマ電位は表面磁場によって20Vまで低下できた。 4.10^<10>〜10^<11>cm^<-3>の高密度のプラズマが得られた。 なお、ここで用いた放電形式は誘導型高周波放電であり、アンテナ導体表面の絶縁の重要性も明らかになった。また、プラズマ中の小さな電極にバイアスを印加することにより、広範囲にプラズマ電位を制御できた。 一方、イオン・表面相互作用の結果、分子イオンが固体表面に衝突すると同時に小さなフラグメントに分解して、ラジカルビ-ムが表面から飛び出す現象を詳細に調べた。このプラズマ界面過程は、将来、新しいラジカルビ-ム源に発展する可能性を示す興味深い現象である。
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