研究課題
試験研究
乳癌は近年日本において急増しており、その発癌因子の究明が急がれている。この研究は、最近開発されたマウス乳腺細胞のコラ-ゲンゲル内無血清培養法を用いて、化学発癌物質と乳腺分化ホルモンを組合せ投与して前癌状態および癌化の過程を再現し、動物を用いる乳腺発癌実験の代替と、乳腺発癌物質の特異的検索法を確立することを目的とする。初年度はまず、乳癌イニシエ-タ-の特異的検索法の開発を行った。ICRマウスの乳腺上皮細胞を外科的およびコラゲナ-ゼ処理により分離し、無血清変法イ-グル培地でコラ-ゲンゲル上培養を行った。一定時間培養後、培養液に化学発癌物質を添加し、24時間後細胞を固定しメイ・ギムザ染色を行って生じた小核を顕微鏡下で計数した。2種の乳腺発癌物質メチルニトロソウレアおよびジメチルベンズアントラセンおよび直接発癌物質N-メチル-N-ニトロ-ニトロソグアニジンは小核の出現を増加させたが、非乳腺発癌物質はペンツピレンが弱い反応を示したほかは、ジメチルニトロソアミン、ジメチルヒドラジン、4-ニトロキノリン-N-オキシドはいずれも陰性を示した。また、ジメチルベンズアントラセンは近似発癌物質であるが、この系では代謝活性化されて陽性を示すことが明らかとなった。以上の結果は、コラ-ゲンゲル無血清培養システムを用いたマウス乳腺上皮細胞の小核の出現を定量することによって、ヒト乳癌のイニシエ-タ-のスクリ-ニングが可能であることを示している。これらの成績は第5回国際環境変異原学会および第3回日本動物実験代替法学会で発表した。
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