研究課題
試験研究
X線トポグラフィやX線顕微鏡像をリアルタイムで観察するため、X線像を直接撮影する高分解能、高感度テレビ撮像管を新しい原理に基づいて試作した。この撮像管は、非晶質Se光電導膜を用いて、X線の入射により発生した信号電荷を高電界動作でアバランシェ増倍(衝突電離増倍)するもので、試作管はX線用のベリウム窓と厚さ4μの非晶質Se感光膜を備えている。これにX線CrKα(2.7Åを入射し、感光膜に印加する電圧を上げていくと、信号電流は360Vで一旦飽和する。従来はこの状態で使用されてきた。さらに電圧を増加すると再び信号電流が増大し、480Vで10倍に達した。このときの暗電流は、0.2nAで、信号増幅器のノイズレベルにほぼ対応し、SN比は従来の撮像系に比して10倍改善された。これにより、X線領域でアバランシェ増倍現象、すなわち入射光によって生成された電子・正孔対が高電界で加速され、衝突、イオン化により新たな電子・正孔対を生成し、さらにそれらが次々と衝突を繰り返すことによって生じる増倍作用が確認された。一般にSSD(Solid State Detector)などでは、アバランシェ増倍作用が起こっているが、この場合空間分解能が劣化する。このためアバランシェ増倍作用をもつ撮像管はこれまで実用化されていなかった。そこで、この試作管について空間分解能(MTF)を測定した結果、増倍作用による劣化が全く認められず、分解能は6μmで感度は10倍向上していることが認められた。来年度はこの成果を踏まえ、硬X線に対して高い検出効率が得られるよう、Se感光膜の厚さを10〜15μmにしたものを試作し、この撮像管の実用化をはかる予定である。
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