研究概要 |
気/液系媒体の利点を生かした泡沫洗浄ならびに泡沫染色においては泡沫の種々の物性が洗浄性,染色性に大きく関連することを明らかにしてきた。筆者らはこれまで泡沫の物性を詳細に解明する既存の測定装置がないため,まず泡膜の動的表面張力,気泡膜の拡張粘弾性,薄膜の排液速度,泡沫密度,液体膜の厚さなどを測定する装置を試作している。 本年度はこれら測定装置を用いて界面活性剤水溶液(または酸性染料,分散染料を含むバルク液)から生成した泡の動的物性について種々検討し,測定装置を部分的に改良するとともに,泡沫による繊維,布およびフィルムなどの基質のぬれ速度などを測定する装置を試作した。 本装置はガラス管内の単一泡膜による動的ぬれを測定する装置で,(1)泡膜を形成し移動させるガラス管固定部,(2)リニアヘッドとシリンジからなる気体流動調節部,(3)圧力センサ-とアンプからなる検圧部,(4)泡膜によるガラス管のぬれにともなう抵抗力を計算するためのデ-タ処理部などから構成されている。 熱力学的には完全に拡張ぬれを示すはずの界面活性剤水溶液/基質の組み合わせであっても,溶液が泡沫状態ならばぬれ広がることなく,かなりの仕事を加えなければ泡沫を基質表面に広げることはできない。 この泡沫によるぬれに関する研究としてはT.G.Sveda,Jr(1986)らの剪断下における泡沫/布間の相互作用に関する研究などが挙げられるが,その機構の解明のためには泡沫を形成する単一泡膜と基質間にある動的性質について検討することが必要と考えられる。 泡沫の流動もまた泡沫洗浄,泡沫染色および泡沫加工をはじめ種々の泡沫利用の基礎となる重要な問題点であるが,その解明についても泡沫を形成する泡膜と基質との間での動的な性質が基本となると考えられる。泡沫密度測定装置については前年度からひきつづき検討している。
|