研究概要 |
泡膜の物性はディメンションが小さく,また多くの因子が相互に関与するため非常に複雑であるが,本試験研究ではまず泡沫のぬれ現象,排液現象,安定性,流動特性のほか泡膜の粘弾性,界面活性剤の吸着特性などの解明を目的として静電容量測定法による泡沫の泡倍率測定装置(泡沫水分体積分率測定装置)および泡膜排液測定装置と,泡膜の粘弾性測定装置,泡接触角測定装置,動的泡膜張力測定装置,液体膜2軸延伸装置および泡膜の動的ぬれ抵抗測定装置などを試作し,改良を重ねてきた。従来精密な測定が不可能だった泡沫などの気液界面の物性はエレクトロニクス技術,センサ-技術の導入によって計測システムが開発された結果,総合的に測定が可能になる方向を見出している。水系洗浄および染色の利点を生かした気液系の泡沫洗浄ならびに泡沫染色においては泡沫の物理化学的挙動がその効果に大きな関連を有していることが明らかになった。最も難度の高い泡膜の粘弾性測定用の試作装置については当初共鳴振動現象によって泡膜を崩壊させ,振動の数学的解析から求める方向で計画し検討したが,当初の計画を大幅に変更し,本試験研究ではアナログメ-タの可動コイルを利用して直接泡膜の粘弾性(表面ずり粘弾性および面積粘弾性)を測定する装置を試作した。なお泡膜の粘弾性測定は動的泡膜張力測定装置を用い,気泡内外部における差圧を測定し,気泡膜の面積の変化量およびその変化速度との関連から算出する方法でも検討した。粘弾性を測定するのには泡膜に変形を与えなければならないが,変形を起させる力をできるだけ大きくして測定可能な量にすることが必要で,今後さらに検討する余地が多く残されている。 また泡膜の厚さの変化は泡の形成,生長,崩壊など泡の一生を探る上で重要なパラメ-タであるため,その測定にあたっては今後連続自動化の方向で光散乱法による測定も考慮している。
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