研究概要 |
本研究の目的は,パッチクランプの下で,膜電流,膜容量,膜電位,ピペット内圧を同時に計測するとともに超高倍率微分干渉光学顕微鏡によりパッチ膜の動態を観測,解析できるようなハ-ドウェアとソフトウェアのシステムを開発することである。本年度(平成2年度)の目標は,全システムの完成と実験による性能評価を行うことである。 1,ハ-ドウェア:昨年試作したマニピュレ-タにはバックラッシュなどの間題点があったが,パルス巾とパルス高を組合わせた制御回路の導入により,0.1μm以下の制御精度,0.2μm/5分の安定性を有するドリフトフリ-マニピュレ-タが完成した。また画像記録テ-プ上に書き込まれたタイムコ-ド(SIMPTE CODE)を位相ロック回路を用いてシリアルに読み出すデコ-ダを製作した。 2,ソフトウェア:デコ-ダからのタイムコ-ドをもとに任意のフレ-ムから任意の間隔で画像を拡張RAM上に取り込むプログラムを完成した。また電気信号収集プログラムを改良して,タイムコ-ドをモニタすることにより,画像信号と電気信号の同期がとれるようにした。さらに取り仕んだ画像に適当なウィンドウをかけて,原画像情報を1/10程度に圧縮し,以後の画像処理速度の格段に向上させた。圧縮した情報はネットワ-ク上でUNIXワ-クステ-ション上に転送し,種々の画像解析や処理が高速度で進行するようにした。 3,性能評価:パッチ膜の圧刺激に伴なう膜伸度の画像と機械受客チャネルの単一チャネル電流記録を行ない,このチャネルの定量的刺激(膜張力)一応答特性を得ることに成功した。また画像からパッチ膜の弾性係数を得ることができるようになった。さらに画像と容量の同時測定により,伸展中の膜厚の変化が評価できるようになった。
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