研究概要 |
この研究は、センチニクバエの抗菌蛋白のcDNAを植物遺伝子の中に導入し、発現させることにより、耐病性の植物を作ることを目的とする。センチニクバエの抗菌蛋白は、ザルコトキシンI,II,IIIおよびザ-ペシンという4種類の蛋白が知られている。この中、ザルコトキシンは主としてグラム陰性菌に、またザ-ペシンは主としてグラム陽性菌に対して至死的に作用する。本研究ではまず、すでに単離されている、ザルコトキシンIAのcDNAをタバコに導入し、transgenicな植物体をつくることを目的とした。簡単に記すと、ザルコトキシンIAのcDNAをプラスミドpGA643につなぎ、T-DNA欠失のAgrobacteriumをつかってタバコ葉ディスクに感染させた。次にこのディスクをカナマイシン入りの培地で選別し、耐性株を分離しカルスとする。これを茎葉分化培地で培養し植物体を育てる。このような方法でいくつかのカナマイシン耐性の株化植物を取得した。ついで、各植物からRNAを抽出し、ザルコトキシンIAのcDNAをプロ-ブとして、新しく導入したザルコトキシンIAcDNAが転写されているかどうかを、ノ-ザンブロット法により解析した。その結果、単離した8株の形質転換体の中6株に、ハイブリダイゼイション陽性のバンドが見られ、RNAの大きさはいずれも、0.6〜0.7kbと推定された。この中、185-1、185-5の2株は、かなり強いシグナルが出ており、ザルコトキシンIAcDNAが、植物体の中で転写されていることがわかった。そこで、このmRNAが翻訳されてザルコトキシンIAが植物体の中に存在するかどうかを、ラジオイムノアシセイ法により検定した。しかし、6株の植物体ともに、ザルコトキシンIAは検出されなかった。可能性として、プラスミドの構築過程でフレイムがずれたことが考えられ、現在植物体からDNAを回収し、塩基配列を分析している。
|