研究概要 |
この研究は,センチニクバエの抗菌性蛋白のcDNAを植物遺伝子の中に導入し、発現させることにより,微生物の感染に抵抗性の植物を作出することを目的としている。センチニクバエの抗菌性蛋白には,ザルコトキシン群に代表される,グラム陰性菌に対して致死的に作用する蛋白と,ザ-ペシンと命名された,グラム陽性菌に対して致死的に作用する蛋白があり,これらの蛋白に対するcDNAがクロ-ニングされている。これらのcDNAの中,ザルコトキシンIAおよびIIAのcDNAをタバコに導入する実験を試みているが,昨年度の実績概要に書いたとうり,mRNAは検出されるものの,蛋白を検出することが出来なかった。本年度は,この研究を継続した結果,ザルコトキシンIAの抗体と交叉する蛋白の発現を認めた。しかし,まだシグナルが弱く,本当にザルコトキシンIAの蛋白があるのかどうかという点について,もう少しくわしく検討する必要がある。従って、このラインの研究は継続して実施する予定である。一方,センチニクバエの幼虫の体液の中に,新しく抗真菌活性を示す蛋白の存在を認めたので,この蛋白の精製とその性質の検討を行なった。植物の病原菌としては,バクテリアよりも真菌類の方が重要であり,抗真菌性蛋白が確認されれば,本研究の重要性が増すことになる。ヒトのカンジダ症の原因となるカンジダアルビカンスに対する致死活性を指標に精製を進め,単一蛋白として純化することが出来た。この蛋白のアミノ酸分析を行なった結果,含まれるアミノ酸は13種類しかなく,アミノ酸組成に片寄りのある蛋白であることがわかった。また,最近になって,この蛋白のcDNAの単離に成功し,完全なアミノ酸配列が決定できた。それによるとこの蛋白は67個のアミノ酸から出来ており,グリシンとレスチジンに富んでいる。次年度はこの蛋白の植物病原菌(真菌)に対する有効性を追求する予定である。
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