研究概要 |
癌の患部を局部的に加温する温熱療法は、副作用の無い有力な癌の治療方法である。しかし、骨腫瘍のような深部の癌を局部的に加温するのに有効な方法は未だ開発されていない。本研究は、生体活性なガラス中に強磁性のフェライト粒子を析出させる方法により、生体内で骨と自然に結合し、しかも交流磁場下で発熱する材料、すなわち体内に埋入して骨腫瘍などの深部の癌だけを加温するのに適した結晶加ガラスを合成する条件を明らかにすることを目的とする。 本年度はまず、CaO・SiO_2組成及び、これ100に対しNa_2O,MgO,B_2O_3,Fe_2O_3,P_2O_5,CaF_2などを3重量比、単独であるいは組み合わせて添加した組成のガラスについて、それらの10×15×1mmの大きさの試料を、無機イオン濃度だけをヒトの血漿のそれにほぼ等しくした(Na^+142.0,K^+5.0,Mg^<2+>1.5,Ca^<2+>2.5,C1^-147.8,HCO_3^-4.2,HPO_4^<2->1.0,SO_4^<2->0.5mM)、PH7.25、温度36.5℃の水溶液に浸漬し、1〜30日の種々の時間経過後、その表面の薄膜X線回折、フ-リエ変換反射赤外分光、走査型電子顕微鏡観察、エレクトロンプロ-プX線微小部分析を行ない、それらガラス表面に骨類似のアパタイト層が形成されるか否かを調べた。その結果、CaO・SiO_2組成のガラスはその表面に比較的早くアパタイト層を形成するが、これにCaF_2及びFe_2及びFe_2O_3が添加されるとアパタイト層の形成が著しく抑制されること、しかし、CaO・SiO_2にFe_2O_3が添加されていても、それにさらにNa_2O,B_2O_3,P_2O_5が単独で、あるいは組み合わせて添加されると、アパタイト層の形成が回復されることが明らかになった。擬似体液中で、あるいは組み合わせて添加されると、アパタイト層の形成が回復されることが明らかになった。擬似体液中でアパタイト層を形成するガラスは生体内で骨と結合する。
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