Mandal博士は日本学術振興会特別研究員としてお茶の水女子大学に滞在した16ケ月の間に、以下の3つの共同研究を行った。 (1)Mandal博士がJoglekar博士と共同で開発した、場の変数に依存する一般化されたBRS変換の手法を用いて、QCDの因子化問題を研究した。QCDの因子化問題とは、QCDにおいて攝動論的に計算できる部分とできない部分とを分離する問題であるが、これまでは光円錐ゲージを用いて因子化の証明がなされてきた。しかしながら、光円錐ゲージのこれまでに知られていたファインマン則は不完全なものであった。このファインマン則を上記の一般化されたBRS変換の手法を用いて改良して、QCDの因子化の証明に役立てた。 (2)磁場中での2次元電子系に対する量子ホール効果を、サスカインドが提唱した、チャーン・シモンズ模型を行列模型として定式化する方法を用いて考察した。この模型ではパウリの排他律を拘束条件として取り入れることができる。この模型を電子とホールに別々の行列を対応させた2行列模型へと拡張した。この拡張された模型を擬電子と擬ホールが共存するエクサイトン解に適用し、座標の非可換と量子補正を考慮しながらエクサイトンの分散関係を評価した。 (3)場の理論においても座標間に非可換性を導入することが、弦理論や量子ホール効果の影響の下に重要となってきた。このような非可換性をもったゲージ理論の量子異常(アノマリー)を研究した。 (1)と(2)はマンダル博士と菅本との共同研究であり、(3)はマンダル博士と日大の出口真一博士との共同研究である。
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