密度行列繰り込み群を高次元系へ適用する方法として開発された「テンソル積変分形式」(TPVA)を、3次元古典系および2次元量子系に応用することが、本研究の目的である。本年度はTPVAの計算精度を、より向上させる為に、変分パラメターを増やす試みを行った。この場合、どのように変分パラメターを最適化すれば良いかという数値計算上の問題があり、TPVAの変分原理に立ち戻って「分配関数極大条件が与える自己無矛盾なパラメター改良方程式」を導きだすことによって、これを解決した。数値計算の不安定性を解消するために、変分計算に現れるレイリー商の分母が小さくならない方向に、試行関数を変化させることがこの研究のポイントであった。2次元量子系への応用については、試行的に正方格子XXZ模型に対して適用してみた所、わずかに3パラメターの変分関数を用いるだけで基底状態のエネルギー期待値を1〜3%の誤差の範囲内で推定できることが判明した。この数値結果は、単なる近似値ではなく、エネルギーの変分上限としての厳密な意味も持っていることを強調しておく。本研究期間中に来日したAndreas Kemper氏と西野・Gendiarの3者で、簡単な研究成果の交換を行ったところ、思いがけず共同研究が始まったことも追記しておく。これは、表面原子の確率的な拡散を扱う模型で、我々が持つ数値繰り込み群の技法が適用可能であることが判明したので、直ちに共同で計算を進め、結果を"Stochastic light cone CTMRG : a new DMRG approach to stochastic models" J.Phys.A.Math.Gen.36 (2003) 29にて公表した。
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