d-π相互作用を持つ分子性伝導体の固体物性の研究

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01F00256
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 田島 裕之 東京大学, 物性研究所, 助教授
• 研究分担者: DING Yuqin 東京大学, 物性研究所, 外国人特別研究員
• キーワード: 分子性伝導体 / 電荷分離 / 反射スペクトル / 強磁場

研究概要

d-π電子系においては、巨大負磁気抵抗を示す物質が数多くあり、それらを分光学的な手法で研究することを目標として、本研究はスタートした。しかしながら、分光学的測定に適した大きな単結晶が得られるd-π電子系においては、負磁気抵抗は小さく、また負磁気抵抗が大きな試料では小さな単結晶しか得られないため、本年度はτ型伝導体を中心に研究を進めた。この試料はd電子こそ含んでいないが、d-π電子系と同様に大きな負磁気抵抗を示すことがわかっている。当該外国人研究員と協力して実験を進めた結果、このτ型伝導体の中赤外反射スペクトルが負磁気抵抗に対応した大きな変化することを見出した。現在は、遠赤外領域の実験の準備を行っており、負磁気低抗に対応した変化がより低波数側でどのように見えるか調べる予定である。また中赤外領域の結果はデータを取りまとめて、投稿準備をしているところである。
当該外国人研究員は、これらの実験と平行して、i)電荷分離が起こる系(β-ET_2PF_6)での反射スペクトル・Ramanスペクトル温度依存性の実験、ii)電荷注入ができると言われている電荷移動錯体β'-ET_3(A(II)Cl_4)_<2-x>(B(III)Cl_4)_xの反射スペクトル・Raman測定を行っている。前者に関しては、結果の一部がプロシーディングスとして受理されている。また全データをまとめた本論文を近々Physical Review Bに投稿する予定である。ii)に関しては、投稿のためのとりまとめを、現在行っているところである。

研究成果

• [文献書誌] Y.Ding, H.Tajima: "Low temperature polarized reflectance spectra of β-(BEDT-TTF)_2PF_6"Synthetic Metals. (印刷中).
• [文献書誌] H.Tajima, N.Hanasaki, M.Matsuda, F.Sakai, T.Naito, T.Inabe: "Magnetoresistance study on TPP[M(Pc)(CN)_2]_2(M=Fe, Co, Fe_<0.30>Co_<0.70>)salts"Journal of Solid State Chemistry. 168(2). 509-513 (2002)
• [文献書誌] T.Yamamoto, H.Tajima, R.Kato, M.Uruichi, K.Yakushi: "Raman Spectra of (Me_2-DCNQI)_2Cu_xLi_<1-x>(0<x<1)-The evidence for Charge separation at room temperature in a one-dimensional conductor having a quater-filled band"Journal of the Physical Society of Japan. 71(8). 1956-1964 (2002)
• [文献書誌] H.Tajima, S.Kyoden, H.Mori, S.Tanaka: "Reflectance Spectra of Θ-ET_2MM'(SCN)_4[MM'=RbCo, RbZn, CsZn]"Molecular Crystals and Liquid Crystals. 380. 215-220 (2002)
• [文献書誌] M.Matsuda, T.Naito, T.Inabe, N.Hanasaki, H.Tajima: "One-dimensional p-d System with Axially Substituted Iron(III) Phtalocyanine"Molecular Crystals and Liquid Crystals. 380. 277-282 (2002)
• [文献書誌] T.Kawamoto, M.Ashizawa, T.Mori, T.Yamamoto, J.Yamaura, H.Tajima: "Anion Ordering and Optical Properties of the Quasi-One-dimensional Organic Conductor (ChTM-TTP)_2GaCl_4"Journal of the Physical Society of Japan. 71(12). 3059-3064 (2002)