ツルマメ(Glycine soja)はダイズ(G. max)の祖先野生種であり、ダイズの育種を行う上で重要な遺伝資源となっている。その分布は中国から日本にかけての東アジアである。本研究は、ツルマメの遺伝的多様性をKunitz型トリプシンインヒビター(SKTI)遺伝子やDNA多型等に基づいて解析する。さらに、ツルマメの持っている高タンパク質特性に着目し、ダイズとの交配後代を材料にしたQTL解析を行い、高タンパク質含量に関する量的遺伝子座を同定するとともに、高タンパク質育種へのマーカー育種の基礎技術の開発を行うものである。 (1)ツルマメの遺伝的多様性の解析:SKTI遺伝子を指標としてツルマメの遺伝的多様性の解析を行った。現在まで、ダイズ及びツルマメのSKTIには6つのタイプが知られ、それらのうちTiaとTibは9つのアミノ酸が異なり、その他は全てTiaと1つのアミノ酸が異なっているタイプである。本研究では新たな変異体を2つ見いだし、その塩基配列の解析を行った。その結果、1つはTibの点突然変異体でアミノ酸が1つ異なっており、もう一方はTiaとTibの中間型でTiaに比べてアミノ酸が5つ異なっていた。前者については、交配実験により従来の型の対立遺伝子支配であることを明らかにした。後者については日本の620系統を調査し秋田から鹿児島まで10カ所から収集した系統で見つかり、トリプシンインヒビター活性も従来のタイプと比較しそれほど大きな差異はなかった。本研究で、TiaとTibの中間タイプが初めて見いだされたことは、SKTIの進化及びツルマメとダイズの進化を考える上で重要である。 (2)ツルマメのダイズ育種への利用:ツルマメのもつ高タンパク質特性に着目し、そのQTL解析を行うための、高タンパク質ツルマメとダイズとのF2植物を栽培し、DNA単離のためのサンプリングと農業形質の調査を継続中である。分担者の研究期間が平成15年11月までなので、それまでにはある程度の成果が出るものと考えている。
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