研究概要 |
CA及びMA貯蔵中におけるスライスピーマンのフェノール物質含量及び抗酸化能の変化について調査した. 1.実験材料の調製 ピーマンは薄い輪切りとし,簡易CA貯蔵装置を用いて,空気,2%酸素/10%二酸化炭素および2%酸素/20%二酸化炭素条件下に貯蔵した.また,厚さ0.03mm及び0.05mmポリエチレン袋ならびに厚さ0.03mmポリプロピレン袋に100gずつ密封包装し(MA処理区),2℃で貯蔵した.対照区は有孔ポリエチレン包装とした.これらの試料を適宜実験に供し,フェノール物質含量,アスコルビン酸含量,抗酸化活性,DPPHラジカル消去活性を測定した. 2.結果及び考察 (1)スライスピーマンのフェノール物質含量,抗酸化活性及びDPPHラジカル消去活性は貯蔵中に空気対照区及び2つのCA条件区において増加した.CA貯蔵区においては,14日貯蔵後のフェノール物質含量は空気対照区よりも低くなり,抗酸化活性およびラジカル消去活性についても低かった.このことより高濃度の二酸化炭素条件はフェノール物質含量の増加を抑制し,抗酸化能にも影響することが示された. (2)MA処理区においても,スライスピーマンのフェノール物質含量,抗酸化活性およびラジカル消去活性はすべての区において増加した,厚さ0.03mm0.05mmポリエチレンおよび厚さ0.03mmポリプロピレン包装区において,14日貯蔵後のフェノール物質含量は有孔包装区よりも低く,抗酸化活性とラジカル消去活性についても同様の傾向を示した.GCによるガス組成分析から,袋内が高二酸化炭素条件となるほど,フェノール物質の増加が抑制される傾向であった. (3)アスコルビン酸含量はCAおよびMA貯蔵中に減少した.10%二酸化炭素条件はアスコルビン酸の保持効果が高かったが,より高濃度の二酸化炭素条件となった場合には保持効果が低く,アスコルビン酸の酸化が促進されるものと推察された. 以上より,フェノール物質の誘導とアスコルビン酸の減少抑制には10%二酸化炭素条件が適当と思われた.
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