研究概要 |
ネパール、インド、チベット、ブータン地方の高地に棲息し、酸素が希薄で極めて低温にも耐え得るウシ科のヤクのミルクは乳牛のそれに比べて脂肪含量とタンパク質含量の多さに特徴があり、昔からチーズやバターが作られ、それらの地域では重要な食糧としてばかりでなく、内科的あるいは外科的疾病の治療や予防に薬として利用されている。そこで、本研究は、ヤクミルクの薬効特性を調べるために開始したもので、純系のヤクのミルクから作ったバターの脂肪酸組成とビタミンAおよびトコフェロール含量をGLCとHPLCで測定し、ウシバターのそれらと比較した。ヤクバターのコレステロール含量と脂質酸化速度は、それぞれGCと重量測定法によって判定した。ヤクバターは、短鎖の飽和脂肪酸を多く含んでいるので強い匂いを有している。主な脂肪酸は16:0,18:1(n-9),14:0,18:0,4:0,8:0であった。また、レチノール量は脂肪100g中に402.3μgであった。ウシバターのγ-トコフェロール量は脂肪100g中に44μgであるが、α-トコフェロール量は、ウシバター(1.9mg/100g脂肪)よりもヤクバター(2.6mg/100g脂肪)の方が多かった。βとδ-トコフェロールはヤクおよびウシバター中にほとんど検出できなかった。ヤクバター中のコレステロール量(325mg/100g脂肪)は、ウシのそれ(223mg/100g脂肪)よりも多かった。ウシバター脂質の酸化速度は、ヤクのそれに対して速くしかも高い。極性脂質含量はウシに比べてヤクバターの方が多かった。
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