我々は、タンパク質の詳細な3次元立体構造を、X線結晶構造解析の手法を用いて決定しようとしている。Heddle博士は、バクテリアのNikAと呼ばれるタンパク質の遺伝子のクローン化に成功し、同タンパク質の大量発現系構築およびタンパク質の精製法を確立している。良質なタンパク質結晶も得られており、現在ではセレノメチオニン置換タンパク質を調整し、位相情報決定に用いようとしている。また、超遠心分析法(流体力学の理論を用いて、タンパク質分子のおおよその形を求める)、等温熱量測定法(リガンド結合に伴うエンタルピー変化を測定することによって、リガンド結合の親和性を求める)、など様々な物理化学的手法を用いて、NikAの性質を測定した。 横浜市大の佐藤衛博士の協力を得て、X線小角散乱を利用した溶液中のNikAの構造解析も試みた。得られた低分解能立体構造データは、超遠心分析法で測定された性質と良い一致を示した。 また、横浜理研ゲノムセンターの伊藤隆博士の協力を得て、NMRによる溶液中NikA構造解析にも着手した。NikAの分子量は非常に大きい。NMRで構造が決定できれば、今までで最大級のタンパク質である。 あと数ヶ月で、NikAの高分解能立体構造は決定できると考えている。構造決定ができ次第、活性部位についての考察・議論をするため、アミノ酸置換タンパク質を調整して活性測定を行う予定である。
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