ポリマー中に少量の金属成分を含むプラスチック材料(アイオノマー)の溶融レオロジー特性について研究を行った。この材料は一般にイオン結合の存在によって、もとのポリマーの特徴を保持しつつ、物性が向上することが知られている。一方、イオン結合は温度や流動に大きく影響し、溶融状態では特異的な性質を示すため、その挙動が明らかではなかった。そこで本研究では動的粘弾性や伸長粘度等の溶融特性を調べ、アイオノマーの成形加工性や接着性について検討した。 1.レオロジー測定 はじめにEMAAアイオノマーとEAAアイオノマーの溶融物性測定を行った。その結果、溶融粘度は金属成分の種類や量の違いによって大きく影響を受けることがわかった。活性化エネルギーはZnイオンに比べNaイオンを含むアイオノマーの方が小さくなった。これらの結果は各金属成分のイオン結合力や配位数の違いに原因があると考察した。 また2種類の異なる金属成分を含むEMAAアイオノマーの溶融物性測定も行った。溶融粘度はブレンドした2種類の金属成分の種類に大きく関係していた。アルカリ金属成分を含むアイオノマーは遷移金属成分のみのアイオノマーにくらべ、溶融粘度は非常に小さくなる。少量のアルカリ金属成分を含むアイオノマーでも溶融粘度減少がみられた。 以上の考察からアイオノマーの溶融物性は.、金属成分の種類や量、2種類の金属成分のブレンドによって制御できることが明らかになった。 2.成形加工性評価 溶融特性と接着性の相互関係を明らかにするための研究を行った。これにより伸長粘度特性が接着性に大きく関係しており、接着のメカニズムせ考える上で非常に重要な結果を得ることができた。
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