花きの老化は、1)エチレンに依存して進行する場合と、2)エチレンに非依存的に進行する場合の2つに類別される。前者については現在までに多くの研究が行われ、多くの関連遺伝子が単離・解析されている。しかし、後者の老化関連遺伝子はあまり研究が行われていない。エチレン受容体は、花きの老化に関連する遺伝子と考えられているが、エチレン非感受性花きからは単離されておらず、その老化における役割も不明である。また、花きの老化過程でタンパク質分解酵素の活性が上昇すること、特にシステイン・プロテアーゼの活性が上昇することが知られている。 本研究では、エチレン非依存的に老化が進行する花きとしてグラジオラスを対象に、エチレン受容体とシステイン・プロテアーゼ遺伝子を単離し、この構造及び機能の解析を行う。さらに、花き発達中のそれらの発現解析を行い、その遺伝子の老化における役割を推定する。 1、エチレン受容体遺伝子の単離・解析:既に単離されているエチレン受容体遺伝子から混合プライマーを設計した。グラジオラスの蕾ステージから調整したcDNAを鋳型にRT-PCRを行い、約1kbのcDNA断片を増幅した。シークエンスの結果、2つのクローンが同定され、ともにETR1サブファミリーのエチレン受容体遺伝子と80-86%の相同性を示し、GGER1及びGGER2と命名した。GGER1を用いてゲノミックサザン解析を行ったところ、ゲノム中には2つの類似遺伝子があるものと推定された。GGER1については、RACE-PCRを行い、3'側全ての配列を得ることができた。 2、システイン・プロテアーゼ遺伝子の単離・解析:既に単離されている単子葉植物のシステイン・プロテアーゼ遺伝子から混合プライマーを設計した。グラジオラスの蕾ステージから調整したcDNAを鋳型にRT-PCRを行い、約380bpのcDNA断片を増幅した。シークエンスの結果、この配列は、ヘメロカイス、カーネーション、シロイヌナズナから単離されているシステイン・プロテアーゼの塩基配列と65-75%の相同性を示し、また推定アミノ酸配列よりパパイン型システイン・プロテアーゼの特徴を保存しており、パパイン型のシステイン・プロテアーゼであると推定され、GGCYP1と命名した。
|