本年度は、昨年度に引き続いて、スリランカ・コロンボ都市圏における市街化要因分析をより詳細に行い、その結果を用いてセルラーオートマタ(CA)市街化予測モデルの試作版を開発した。次に、スリランカ・コロンボ都市圏で現地調査を行った(平成14年9月1日〜9日)。この調査には、調査捕助として研究代表者が所属する研究室の院生1名を同行させた。現地では、市街化の現状、土地利用の調査、市街化要因分析結果の検証、現地都市計画専門家へのヒアリング、都市計画関連情報の入手を行った。その結果、コロンボ都市圏では、都心部への一極集中と郊外へのスプロール化が顕著である。また、沿道付近では点々とした小規模開発が、内陸部では工業団地の開発が行われており、それに伴い慢性的な交通渋滞が発生していた。新首都Kotte地区では湖や湿地帯の埋立などによる新規開発が進んでおり、この地区を中心に今後の市街化が予想される。スリランカ都市開発公社の方へのヒアリングでも、コロンボ都市圏の市街化は、工場や道路へのアクセス性により左右されるとのことであった。調査で得られた知見を踏まえ、CAモデルを開発した。モデル開発では、現地の市街化が道路に沿って発生していること、中心部(CBD)から段階的に市街地密度が下がっていることを踏まえ、これまで開発してきたモデルに、道路とCBDからの距離により変化する開発ポテンシャルを市街地形態の変数として組み込んだ。また、将来の開発計画は変数として考慮していないものの、ある一定の確率で、新たな市街地が発生するものとした。これにより、工業団地などの新規開発地の出現を考慮している。開発したモデルにより1972年から1991年までの市街化を再現したところ、妥当な結果が得られた。本年度の研究成果の一部は、平成14年度日本建築学会東海支部研究報告会で報告した。次年度は、モデルをGISに実装し、計画支援ツールを開発する予定である。
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